「 おや? 離れの横の木の上から音が聞こえる??」
ゴシゴシ・・ バシバシ・・ キコキコ・・
「 何で木の上から、鋸の音がする??」
「 何が起こったのじゃ??」
「 木の上で、誰かが枝を切っておる??」
「 オ~イ!! 住職かい??」
よう、和尚お早うさん!!
「 おや? 住職の声では無いなあ??」
「 そこに居るのは誰じゃ??」
「 うんにゃあ!!!!」
「 儂ではないか!! 和尚の儂ではないか??」
「 儂しゃ?? まだ寝とるのかや??」
「 木の上に儂が居る??
それでは、それを見ておる儂は誰じゃ??」
和尚、お早うさん!!
ほれ儂じゃ、ほれ儂じゃ!!
「 その声は、狸殿ではないか??」
「 何で和尚の儂になって、
檜の木に登って枝を切っておる??」
この前に、和尚が檜の枝を切らないかんと言っておった。
それをふと思い出して、
仕事を手伝おうと思ったのじゃ!!
それで、今日は良い天気じゃて、
椿の葉っぱを五枚使って人間にばけたのじゃ!!
それも普通の人間じゃと、
木の登るのは無理じゃと思い、
木登り名人の和尚に化けたのじゃ!!
「 それで、和尚の儂が2人も居るのか!!」
「 住職が2人の儂を見たら、発狂するぞよ!!」
「 狸殿落ちたらいかんから、早よ降りといで・・」
「 後は本職の和尚に任しとき・・・・」
ヘイヘイ!!
ぼちぼち、化けの皮が剥げて狸に戻ると、
木から落ちるからのう!!
猿も木から落ちるが、狸は必ず落ちるのう!!
後は、和尚に任すわ!!
「 狸殿、ご苦労さん。」