「 おや? 離れの横の木の上から音が聞こえる??」

 ゴシゴシ・・ バシバシ・・ キコキコ・・

 

狸木に登る (5)


 「 何で木の上から、鋸の音がする??」

 「 何が起こったのじゃ??」

 

 「 木の上で、誰かが枝を切っておる??」

 「 オ~イ!! 住職かい??」


狸木に登る (6)

 

 よう、和尚お早うさん!!

 

 「 おや? 住職の声では無いなあ??」

 「 そこに居るのは誰じゃ??」

 

狸木に登る (3)


 「 うんにゃあ!!!!」

 「 儂ではないか!! 和尚の儂ではないか??」

 

 「 儂しゃ?? まだ寝とるのかや??」

 「 木の上に儂が居る?? 

それでは、それを見ておる儂は誰じゃ??」


狸木に登る (8)

 

 和尚、お早うさん!!

 ほれ儂じゃ、ほれ儂じゃ!!

 

 「 その声は、狸殿ではないか??」

 「 何で和尚の儂になって、

檜の木に登って枝を切っておる??」

 

 この前に、和尚が檜の枝を切らないかんと言っておった。

 それをふと思い出して、

仕事を手伝おうと思ったのじゃ!!

 

 それで、今日は良い天気じゃて、

    椿の葉っぱを五枚使って人間にばけたのじゃ!!

 

 それも普通の人間じゃと、

木の登るのは無理じゃと思い、

木登り名人の和尚に化けたのじゃ!!

 

 「 それで、和尚の儂が2人も居るのか!!」

 「 住職が2人の儂を見たら、発狂するぞよ!!」

 

 「 狸殿落ちたらいかんから、早よ降りといで・・」

 「 後は本職の和尚に任しとき・・・・」

 

 ヘイヘイ!!

 ぼちぼち、化けの皮が剥げて狸に戻ると、

木から落ちるからのう!!

 

 猿も木から落ちるが、狸は必ず落ちるのう!!

  後は、和尚に任すわ!!

 

 「 狸殿、ご苦労さん。」